皆さんは看護師と聞くと、どの様な仕事を思い浮かべますか?多くの人が病棟や、町のクリニックで働く看護師を思い浮かべると思います。でも実は、非常に少数派ではありますがオペ室に勤務する看護師もいて、オペ看、オペナースなんて呼ばれ方をしています。オペ室の看護師は人数も少ない為、あまりメジャーではありません。大学や専門学校で学ぶ事も殆どなく、調べたくても本やサイトに載っている情報は少ないので、オペ室に興味があったり、オペ室に入りたい!と思っている方は、情報の少なさに残念な思いをする事があるかと思います。ですので、その残念な思いを解消する為に、現役でオペ室に勤務している看護師としてオペ室看護師の情報について発信していきたいと思います。
今回の記事では、消化器外科での器械出しのポイントについて詳しくお話ししていきます。
1.消化器外科での手術とは
消化器外科の手術と聞くと皆さんは、どの様な手術を思い浮かべますか?漠然とお腹の手術かなと言うイメージでしょうか。ズバリ、消化器外科では、食道、胃、十二指腸、肝臓、胆嚢、脾臓、膵臓、小腸、大腸など食道から肛門までの全ての消化管の手術を行なっています。
①主な疾患
手術室でよく担当する疾患としては下記があるため器械出しを行う際は、病態生理と解剖生理も合わせて勉強すると手術についても深くまで学ぶ事が出来き、結果としてスムーズな器械出しができる様になるかと思います。
食道 | 食道癌 |
胃 | 胃癌 |
胆道 | 胆道癌 |
肝臓 | 肝細胞癌 |
胆のう | 胆石症、胆のう炎 |
膵臓 | 膵臓癌 |
脾臓 | 脾機能亢進症 |
腸 | 大腸癌、腸閉塞、潰瘍性大腸炎、クローン病 |
②消化器外科の術式
消化器外科の術式は大まかに分けると開胸術、開腹術、腹腔鏡手術の3種類があります。開胸術は食道切除術で行われる事が多く、殆どの手術は開腹術と腹腔鏡手術で行われています。
手術室でよく担当する手術としては下記があるため、器械出しを行う際は手順をよく調べて復習してから望むと良いでしょう。
食道 | 食道切除術、噴門形成術 |
胃 | 胃切除 |
腸 | 小腸切除、大腸切除、虫垂切除 |
肝臓 | 肝臓切除 |
胆のう | 胆のう摘出 |
膵臓 | 膵臓切除 |
脾臓 | 脾臓摘出 |
ヘルニア | ヘルニア修復術 |
2.消化器外科における感染対策
消化器外科では上記に書いた様に、食道から肛門までの消化器を扱います。その為それらの消化器を切離した場合、清潔ガウンと手袋を着用しようと、無菌であった胸腔や腹腔に影響が及ぶ事になります。また切離した部分から消化管内に存在している細菌が漏出し、感染症へと繋がる可能性もあります。特に手術後の患者さんの体は抵抗力が低下していますので、感染には最大限気を配る必要があります。
消化管切離や再建操作がある場合、それらの操作に用いられた器械は触れた部分、特に先端部分が消化管内の組織や消化液と接触する為、不潔とみなされ不潔器械として清潔器械とは区別して管理する必要があります。器械出し看護師は術野をよく観察し、術者がどの様な操作をしているのか、その操作で使用された器械は不潔か清潔かをアセスメントし区別し感染対策に努める必要があります。
最初は器械を渡すのに必死になり、術野をあまり見れないかも知れません。
ですので、どの器械が不潔になるのかをシュミレーションしておくと良いでしょう。
3.エネルギーデバイスの取り扱いを知る
消化管の切離や再建には、手縫いの場合もありますが縫合不全や出血、狭窄の術後合併症などの発生頻度が低い事から、基本的には自動縫合器や自動吻合器が使用されます。この自動縫合器や自動吻合器は、色んなメーカーが様々な種類の製品を販売しており、基本的に似ていますが使い方も様々です。ですので、自分の病院ではどのメーカーの製品を使用しているか、どの手術でどのデバイスを使用しているか、デバイスの使用方法を確認し理解しておくと良いでしょう。
①自動縫合器
自動縫合器とは、組織を縫い合わせるデバイスの事を指します。リニアステープラーとも呼ばれます。
代表的な自動縫合器は下記にまとめます。
コヴィディエン社製 | Signia | 組織の抵抗をステープラーが感知し、最適な打針スピードに自動的に調整してくれるという機能を持っています。 |
ジョンソン・エンド・ジョンソン社製 | ECHELON | 打針時のステイプルをより適切にアンビルポケットに誘導するために3つの機能を搭載しています。 |
②自動吻合器
自動吻合器とは、組織を縫いながらつなぎ合わせる(異なる消化管の内腔を交通させる手技)デバイスです。サーキュラーステープラとも呼ばれています。手術としては食道空腸吻合、残胃十二指腸吻合、結腸直腸吻合などで用いられることが多いです。
代表的な自動縫合器は下記にまとめます。
コヴィディエン社製 | DST Series™ EEA™ サーキュラーステープラー | 独自のディレクショナルステープリングテクノロジー、ティルトトップアンビルなどの機能を備えています。 |
ジョンソン・エンド・ジョンソン社製 | ILS | ギャップセッティング機構などの機能を搭載しており、“Flexible Anastomosis”が可能となるのが大きな特徴です。 |
また、消化器外科だけではありませんが電気メスや超音波凝固切開装置などの、使用方法も確認し理解しておくと良いでしょう。最初はどの製品がどの様なデバイスか全く分からないと思いますが、使用していくと何となく理解していきますので焦って覚える必要はないかと思います。
デバイス類は普段使用するものではないので、特性を覚えるのは大変だと思います。ですので、最初から全てを覚えようとするのではなく、器械出しを行う手術で使用するデバイスから覚えていくと良いと思います。