皆さんは看護師と聞くと、どの様な仕事を思い浮かべますか?多くの人が病棟や、町のクリニックで働く看護師を思い浮かべると思います。でも実は、非常に少数派ではありますがオペ室に勤務する看護師もいて、オペ看、オペナースなんて呼ばれ方をしています。オペ室の看護師は人数も少ない為、あまりメジャーではありません。大学や専門学校で学ぶ事も殆どなく、調べたくても本やサイトに載っている情報は少ないので、オペ室に興味があったり、オペ室に入りたい!と思っている方は、情報の少なさに残念な思いをする事があるかと思います。ですので、その残念な思いを解消する為に、現役でオペ室に勤務している看護師としてオペ室看護師の情報について発信していきたいと思います。
今回の記事では、術後の患者さんの状態を把握し評価するための術後訪問について詳しくお話ししていきます。
目次
①術後訪問とは
術後訪問では、術後の患者さんを訪問し術後の状態を把握し、適切な看護を提供出来ていたかや看護目標の最終評価を行うために訪問します。不足はなかったか、改善すべき点はないか等を振り返り、次に活かせるようにしましょう。
術後訪問は訪問するのを忘れやすいため、訪問のタイミングを意識しておくと良いかと思います。
②目的
<術後の患者さんの状態を把握し看護の評価を行う>
術後訪問へ行く際には、まずカルテで術後の患者さんの情報を収集してから行くようにしましょう。患者さんの状態を把握することで、立案した看護計画が適切であったか、また適切な看護が提供出来ていたかを評価し、今後の看護に活かして下さい。もし改善点などがあればカンファレンスやミーティングで話し合い、手術室看護師全体で問題点を共有し解決出来るように努めて下さい。1年目の頃は自己的にカンファレンスなどで発言するのは勇気が必要だと思いますので、まずはプリセプターや親身になってくれる先輩に相談してみるのが良いかと思います。
<継続看護の状態確認>
術中に展開した看護問題の中には、術後も引き続き継続されている問題もありますので、申し送りで伝えるだけでなく、継続されている看護問題に対して病棟ではどの様な対応がされているか、また問題は解決しているのか、継続中であるのかを確認しましょう。
③ 収集するべき情報
①皮膚の状態
→術前にも確認していると思いますので、新たな皮膚損傷が発生していないかを評価するために確認して下さい。高齢の患者さんは皮膚が脆弱になっている事も多く注意が必要です。特に痩せ型の患者さんや極度の肥満の患者さんはリスクが高く、肥満の患者さんは体圧分散具を使用していても発赤が出来てしまう場合があります。
②同一体位による疼痛発生の有無
→術中は長時間同一体位をとっているため不適切な体位であった場合、体重や外部からの圧迫による末梢神経障害や皮膚トラブルなどの発生が考えられます。手術時間が長くなるほど発生しやすく、障害の程度が大きくなりますので必ず確認しましょう。褥瘡の好発部位や神経圧迫をし易い部位を体位毎にまとめておくと、わかり易いかと思います。
③創部痛、感染兆候の有無
→ 手術をして侵襲がある場合、程度の差はあれど痛みや炎症反応はあるかと思います。しかし、痛みがいつまでも軽減しない、または増大していく場合や感染兆候などがある場合は担当の看護師、主治医に報告するようにして下さい。一般的には、体表面手術で1~3日程度、開腹手術で5~7日で痛みが緩和すると言われていますので参考にしてみて下さい。また、術後は痛み止めを使用して痛みを抑えている事から疼痛の訴えのない患者さんもいます。
感染が全身に及ぶと敗血症や菌血症となり、全身状態が悪化しますので発赤、腫脹、熱感、疼痛の感染兆候は覚えておきましょう。
⑥歯、口腔環境の状態
→術前にも歯の欠損や動揺歯、義歯の有無などを確認していると思いますので、変化がないか確認して下さい。全身麻酔では挿管チューブを挿入するのに喉頭鏡を使用するため、歯の欠損や口腔内に傷がついてしまう可能性があります。なので、術前と変化がないかを確認しましょう。動揺歯がある患者さんや、開口制限がある患者さんは特にリスクが高いため要注意です。
⑦手術に対しての思い、要望、希望
→術前から術後にかけて不快な思いをしていなかったか、 不安を増強させるような出来事がなかったか、要望などを確認し、もし改善点があれば次に活かせるようにしましょう。
私が勤めている病院では、女性の患者さんから担当する看護師は女性が良いと希望があったのにも関わらず、申し送りが適切に出来ていなかった結果、男性看護師が対応し苦情を受けた経験があります。全ての要望に応えるべきだとは思っていませんが、対応できる範囲であれば患者さんの要望に応えることで不安軽減に繋がると思いますので意見を是非聞いてみて下さい。
私は局所麻酔の手術を受ける男性の患者さんから「手術中が怖いから抱きしめてほしい」「ずっと手を繋いでほしい」と言われた経験がありますが、男性の看護師や医師が来るとその様な発言はなくなったので、応えなくて良い要望であったと私は思っています。
④まとめ
術後訪問について詳しく説明させて頂きましたがいかがだったでしょうか?術後訪問はただ訪問すれば良いという訳ではなく、タイミングや何の目的で術後訪問を行うかを考慮しなければなりません。私が勤めている病院では離床のタイミング、具体的には手術3日目を目安に訪問しています。しかし、最近では入院日数の短縮化に伴って手術翌日から離床を始めたり、翌日には退院される患者さんもいますので、患者さんに合わせて訪問するようにして下さい。3日目にはもう退院していたという事もあるかと思いますので、先輩方がどのタイミングで術後訪問に行っているかを観察しておくと、自分が訪問する時もタイミングが分かり易くて良いかと思います。
私が術後訪問を行い始めた頃は3日目に行く事だけを意識し過ぎて、訪問前に退院してしまい適切な評価ができなかった事があります。