皆さんは看護師と聞くと、どの様な仕事を思い浮かべますか?多くの人が病棟や、町のクリニックで働く看護師を思い浮かべると思います。でも実は、非常に少数派ではありますがオペ室に勤務する看護師もいて、オペ看、オペナースなんて呼ばれ方をしています。オペ室の看護師は人数も少ない為、あまりメジャーではありません。大学や専門学校で学ぶ事も殆どなく、調べたくても本やサイトに載っている情報は少ないので、オペ室に興味があったり、オペ室に入りたい!と思っている方は、情報の少なさに残念な思いをする事があるかと思います。ですので、その残念な思いを解消する為に、現役でオペ室に勤務している看護師としてオペ室看護師の情報について発信していきたいと思います。
今回の記事では、泌尿器の手術での器械出しのポイントについて詳しくお話ししていきます。
1.泌尿器での手術とは
泌尿器の手術と聞くと皆さんは、どの様な手術を思い浮かべますか?漠然と膀胱などの手術かなと言うイメージでしょうか。ズバリ、泌尿器では腎臓、尿管、膀胱、尿道などの尿を生成し輸送、貯蓄、排出に関わる尿路系と呼ばれる臓器、副腎などの内分泌系の臓器、睾丸、陰嚢、前立腺などの男性生殖器系の臓器を主に取り扱い手術しています。ちなみに、女性の生殖器は産婦人科が専門となっていますのでご注意下さい。
①主な疾患
手術室でよく担当する疾患としては下記があるため器械出しを行う際は、病態生理と解剖生理も合わせて勉強すると手術についても深くまで学ぶ事が出来き、結果としてスムーズな器械出しができる様になるかと思います。
腎臓 | 腎臓癌 |
尿管 | 尿管狭窄 |
膀胱 | 膀胱癌 |
前立腺 | 前立腺癌 |
尿道 | 尿道狭窄 |
陰嚢 | 陰嚢水腫 |
陰茎 | 包茎 |
②泌尿器の術式
泌尿器の術式は大まかに分けると開腹、腹腔鏡、経尿道的、経皮的の4種類があります。経尿道的手術では器械出し看護師は入らず、執刀医と外回り看護師の2人で手術を行う事が多いです。ですので、1年目が器械出しを行う術式としては開腹、腹腔鏡が多いかと思います。
手術室でよく担当する手術としては下記があるため、器械出しを行う際は手順をよく調べて復習してから望むと良いでしょう。
腎臓 | 腎臓摘出術 |
尿管 | 尿管ステント、尿管部分切除術 |
膀胱 | 経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)、膀胱部分切除術、膀胱全摘除術 |
前立腺 | 経尿道的前立腺切除術(TUR-P) |
尿道 | 尿道形成術、尿道拡張術(バルーン拡張術) |
陰嚢 | 陰嚢水腫根治術 |
陰茎 | 包茎手術 |
2.泌尿器における感染対策
泌尿器の手術では腎臓、尿管、膀胱、尿道などの尿を生成し輸送、貯蓄、排出に関わる尿路系と呼ばれる臓器を操作します。ですので、尿路系の臓器を操作した際、縫合不全などがあれば腹腔内に尿が漏出する可能性が考えられます。尿は原則的には無菌となっていますが、尿路系に感染症が生じている場合は腹腔内に漏出する事で感染を蔓延させる事となりますので、漏出が起こっていないか確認する事が大切となります。この漏出は、インジゴカルミンという青色に着色出来る薬剤を使い確認される事が多いです。インジゴカルミンは泌尿器の手術では、比較的頻繁に使用する薬剤ですので覚えておくと良いでしょう。私は青色に染まる事を知らずに、尿が青くなっているのを見て非常に驚き医師に慌てて報告し、「インジゴも知らないなんて…」と呆れられた恥ずかしい記憶があります。
インジゴはショック、アナフィラキシー、SAT低下等の可能性があるので投与後は、バイタルサインを確認しよう!SATが低下しても、一過性で1分〜2分ほどで回復する事が多いです。気管支喘息の患者さんで致命的な心停止を起こした報告もあるので注意が必要となります。
3.泌尿器では後腹膜臓器、骨盤内臓器を扱っている
腎臓、尿管、膀胱などの背中側にある臓器を後腹膜臓器と呼び、女性の膀胱などを骨盤内臓器と呼びます。子宮も骨盤内臓器ですが、基本的には産婦人科領域が専門となりますので、ここでは省かせて頂きました。この後腹膜臓器や骨盤内臓器は開腹手術ですと、奥にあるので視野が狭く術野の確保が難しい事が多いです。その為、深さに応じた器械を選択する必要があります。後腹膜臓器や骨盤内臓器の手術では臓器が奥にある事から、器械出し看護師が術野を見る事は難しいと思います。しかし、術野を見ないと何をしているか分からず次に必要な器械を予測する事が出来なくなるので天井にあるカメラで撮影している場合は、モニターを見える位置に配置してもらい術野を確認すると良いでしょう。また、手術室に設置されている無影灯だけでは十分な明るさが確保出来ない事がありますのでその場合は、執刀医又は助手医師がヘッドライトを使用して術野の確保を行います。このヘッドライトは無影灯の役目を担っている為、非常に明るいです。直視してしまうと明るさで目にダメージを負ってしまうので、ヘッドライトを付けた医師が自分の方向を向いた際は顔を背けて明かりを直視しない様にして下さい。私は至近距離で明かりを見てしまい、立ちくらみが起きた事があります。清潔の状態で倒れてしまうと、周囲の器械を不潔にしてしまい結果として患者さんに影響を与えてしまう可能性もあるので注意して下さい。
ヘッドライトを付けている医師と向かい合っている場合、高確率で明かりが目に入りますので注意して下さい。「そんなに明るくないでしょ」と医師に言われた事がありますが、本人が気付いていないだけで本当に明るいです‥。