こんにちは。手術室看護師みにぶたです。
手術室勤務が初めての皆さん、手術を見学していると機械出し看護師がガーゼを数えている場面を見ませんか?
退屈だから数えている‥訳ではなく、実はしっかりとした理由があるんです。ガーゼカウントは簡単そうに見えて、意外と難しく奥が深いので一緒に学び理解を深めていきましょう。
今回の記事では、機会出し業務で行うガーゼカウントについて詳しくお話ししていきます。
①ガーゼカウントとは
ガーゼカウントとは、閉創前に用意したガーゼの数を数えて術前と同じ枚数が揃っているかを確認することです。
清潔台に残っている物や術野にある物は機会出し看護師がカウントし、ベースンに落とした物など、不潔となった物は外回りがカウントします。ガーゼカウントは1人では出来ませんので、機会出しと外回りで協力して必ず2人で行って下さい。
苦手な先輩とペアの時はカウントすらお願いしにくいですよね。
私は1年目の頃に苦手な先輩とペアの時は、目が合わないタイミングでお願いしていました‥。
②カウントする理由
<理由>
ガーゼカウントを行う理由は、ガーゼの体内遺残事故を防ぐためです。
「ガーゼなんて出し忘れる訳ない」「先生達が絶対に出すでしょ」なんて思っている方はいませんか?
実はガーゼの体内遺残事故は実際に起こっており、度々報告されています。手術は、少しのミスが命取りになる場合もありますので十分に気を配りながら行っていく必要があります。
なので、心身共に疲労を感じやすく、特に長時間、困難な事例の場合は疲労感をより強く感じます。手術を行っている医師も人間ですので疲労から注意力、集中力の低下が起こりやすく、体内遺残事故は単純そうに感じますが十分に起こり得る医療事故なのです。
ガーゼが残っていたぐらいで大袈裟だと思った方はいませんか?体内に異物があるという状態は非常に危険ですので、次の項目で詳しく説明していきます。
私はガーゼが体内に残る事を、ガーゼ残留と言っていたのですが調べると「遺残」という言葉が多く使われており、自分の言い方が異なっている事に気が付きました。日本語って難しいですね。
<ガーゼオーマ>
ガーゼオーマとは、手術の際に使用したガーゼが体内に遺残し放置される事で腫瘤に変化する状態です。
また遺残していた場合、ガーゼオーマだけでなく感染や疼痛増加リスクもあります。しかし、症状はすぐに現れる訳ではなくガーゼが遺残していたにも関わらず、術後数年は無症状で経過し、人間ドックで発見された事例もあります。
ちなみに腫瘤とは、瘤や腫れ物などの総称で、しこりとも呼ばれています。作られる原因は関係なく、体表や体内で見られる何かしらの塊の総称として使用されます。
そして、腫瘍とは体の臓器や組織をつくる細胞が、異常な働きをしてできる塊のことです。
似ていますが意味が違うので、覚えておいて下さい。
ガーゼオーマ(gauzeoma)は和製英語で、医療用語でよく使われているドイツ語のomaの意味は、おばあちゃんでした。カタカナで書かれていると外国語が由来だと感じますが実は違うこともあります。
③タイミング
ガーゼカウントのタイミングの基本は、機械準備時(手術開始前)、体腔閉鎖前、筋層閉鎖前、手術終了後です。また、術中に器械出し看護師や外回り看護師が交代した場合もカウントするようにしましょう。
機械出し看護師に時間がない、急遽担当を変更された等、機械準備を他の看護師が行っていた場合には必ず清潔手洗い後、手術開始前までにガーゼカウントを行って下さい。
他の看護師が確認しているとは思いますが、私は他の看護師に機械準備をしてもらった時、手術前にガーゼの枚数を確認すると1枚足りなかったという経験があります。ゴミ箱を探しても無く、何故1枚だけ足りなかったのかは今でも分かっていません。なので、既製品だから枚数の間違いはないと思い確認を怠る事は絶対にしないで下さいね。
手術前のガーゼカウントで足りなかったのは1度だけですが、本当に確認しておいて良かったと思いました。
④ガーゼカウント時のポイント
①ガーゼを清潔台に出す枚数は最低限にする
ガーゼを多く出していると、数える時間がかかり、管理もし辛くなることから紛失のリスクも高まりますので最低限の枚数を出しましょう。
ただ、少なすぎると頻回に外回りに追加してもらう必要があり、トータルで何枚出したかカウントが合わなくなる可能性が出てくるため、術式に応じて必要枚数分を準備するのが最善でしょう。
物品表に書いてあるガーゼの枚数分を基本と考えて、先輩の機械出しを見たり、自分で経験して最善の枚数を探していくのが良いでしょう。
②束でまとめておく
既製品のガーゼは10枚や20枚などで用意されていると思いますので、1束10枚でまとめて置いておき、中途半端な枚数から使用していく等、自分で管理しやすいようにルールを決めておくと良いでしょう。
上記のルールは当たり前のようにも感じますが、最初は行っていないことが多くカウント時に困っている新人さんをよく見ます。
また、医師がガーゼの束から取っていく事もありますので注意しておきましょう。束にしていたガーゼから無くなると焦ってしまうので、私は先にガーゼを渡したり、手の届かない所で管理するようにしています。
③出来るだけガーゼを濡らさない
腹腔内の保護のために、ガーゼを生食で湿らしてから使用する場合があります。湿らせたガーゼは濡れガーゼと呼ばれています。
出したガーゼ全部を濡れガーゼにしてしまうと非常に数えにくく、間違えることが多いため全て湿らせてしまうのは辞めましょう。また乾いているガーゼ(乾ガーゼ)が必要となる場合もありますので、濡れガーゼがなくなったら生食で湿らせるのが良いでしょう。
ただ、具体的に何枚湿らせておくかは手術によって大幅に変化していきますので、経験して自分のスタイルを確立していくのが良いと思います。参考までに、私は開腹手術でトータル40枚のガーゼを出した場合、10枚ずつ湿らせていき閉創が近づき濡れガーゼの必要がなくなりそうになると、1枚ずつ湿らせています。このスタイルになってから、ガーゼカウントがだいぶ楽になりました。
④体内に入れたガーゼは出し入れのタイミングを確認しておき、外回りにも報告する
ガーゼで直接圧迫し止血をする場合など、体内にガーゼが入れられるタイミングがありますので、注意して見ておいて下さい。もし、見逃した場合は医師にガーゼを入れたか確認して下さい。また医師がガーゼを持っているか、ガーゼに付着している血液の量なども確認しておくと分かりやすいかも知れません。
腹腔鏡手術ではモニターに体内が映し出されガーゼのin/outは分かりやすいのですが、開腹手術では術野が見えにくいため見逃してしまう場面もあるかと思います。見逃してしまうと体内遺残の可能性が上がってしまいますので、注意しておいて下さい。
⑤不潔ガーゼを落とす入れ物を決めておく
血液や体液が付着したガーゼは適宜、新しいガーゼと交換します。血液や体液が付着したガーゼはどうするのかと言うと、足元にあるベースンやバケツに入れるようになっているかと思います。当院では不潔ガーゼを入れる物はベースンですが、病院毎によって異なると思いますので確認して下さい。
ガーゼカウントが一致しない場合は、ゴミ箱に入っている事が多いです。真横にゴミ箱用のバケツと不潔ガーゼ用のベースンを並べておくと、誤ってガーゼが入ってしまうことがあるので少し離して置いておくと良いでしょう。
⑤ガーゼカウントが揃わない場合
ガーゼカウントが揃わない場合は、まずは何度か数え直します。その際は、ガーゼ同士がくっついていないか、丸まっているガーゼの中にガーゼが入っていないか、コードをまとめておくのにガーゼを使用していない等を確認してください。
それでも揃わない場合は、外回り看護師がドレープの下やゴミ箱などを捜索します。
そこまでしても発見出来ない場合は、手術を中断してもらい、他の看護師にも手伝ってもらい探します。清潔ドレープがかかっているにも関わらず患者さんの足元に乗っていたり、手術を先におりた医者の手袋に握り込まれたままゴミ箱に捨てられていたり、思いもよらない場所から発見される事もあります。
私がよく経験する場面をまとめておきますので、ガーゼカウントが揃わない時に参考にして頂けたらと思います。
・濡れガーゼの状態だったのでガーゼ同士がくっついていた
・丸まったガーゼが2枚だった
・医師が握っている
・器械の固定に使っていた
・腹腔鏡のカメラを洗う水筒の中に入っていた
・ゴミ箱に入れていた
・標本を外回りに渡した時にくっ付いていた
ガーゼカウントが何度やっても揃わないと慌ててしまいますが、術前に揃っていれば殆ど見つかります。なので、落ち着いて確認しましょう。
⑥まとめ
今回の記事では、ガーゼカウントについて詳しくお話しさせて頂きましたしたが、いかがだったでしょうか?
簡単に思えて慣れないと難しいガーゼカウント。私も新人の頃は、タイミングが掴めずに苦戦した思い出があります。ガーゼの体内遺残が考えられる手術では必ず行いますので、素早く行えるようになると良いでしょう。
手術ではレントゲンで確認出来るように、基本的にはX線不透過ガーゼを使用しますが高価なため、体内遺残が考えにくい眼科の手術やバネ指などの手術ではX線透過ガーゼを使う場合もあります。私は開腹手術でガーゼが少ないと不安でX線不透過ガーゼを多めに出していた時期があったのですが、無駄遣いするなと注意を受けた苦い思い出があります‥。
この記事をキッカケに、ガーゼカウントへの理解が深まると嬉しいです。
以上、最後まで記事を読んでいただきありがとうございました!